大判例

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東京高等裁判所 昭和41年(う)1371号 判決

被告人 大平作松

〔抄 録〕

(当裁判所の判断)

控訴趣意第二点(訴訟手続の法令違反の主張)について。

よつて記録を調査するに、被告人は原審第一回公判における被告事件に対する陳述において「結果的にはそのとおり間違いありません」と述べ、弁護人も「事実は全部認めます」と述べたので、原審は本件を簡易公判手続により審判する旨の決定をし、これに基き審理、判決したことが認められる。そして被告人の右陳述が刑事訴訟法第二九一条の二にいう「有罪である旨」の陳述があつたものと認められるかどうかについては右陳述自体からは必ずしも明白でないが、その点はしばらく別としても、少くともその後の審理過程における被告人の供述、とくに原審第二回公判における被告人の供述に徴すれば、被告人は本件文書の頒布にあたり右文書が法定外選挙運動文書であることにつき事実の認識を欠いていた旨の弁解をし、結局本件公訴事実を否認したことが明らかに認められるのであるから、このような場合、原審はよろしく刑事訴訟法第二九一条の三前段により簡易公判手続によることができないものになつたとして右決定を取り消し、同法第三一五条の二により公判手続を更新して普通の公判手続により審理すべきであつたのに、事ここに出ないで終始簡易公判手続により審判した原審の措置は、訴訟手続に関する法令に違反したものといわなければならない。しかし、原判決は、検察官の請求にかかる全証拠を採用してこれを取り調べたうえ「被告人が公訴事実に示すとおりの違反行為を犯しているという疑念を払拭し得ないのはもちろんであるが、一面被告人の室内用ポスターであることを事前に知つていたとするその自白調書(捜査官に対する)を補強する唯一の証拠である脇屋増枝の供述調書(捜査官に対する)の供述内容の不確実性から、被告人の公判廷における室内用ポスターという事実を知なかつたとする否認供述もまた、全然信憑性なきものとしてこれを抹殺し去ることはできないとし、結局本件公訴事実について合理的な疑をいれる余地がない程度の心証が得られず、証拠不十分であるとの理由により、無罪の言渡をしたもので、右判決の理由からすれば、たとえ普通の公判手続により審理したとしても、明らかにこれと異る判決に到達したであろうとはおよそ考えられないところであるから、前記訴訟手続の法令違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであるということはできない。したがつて論旨は理由がない。

(足立 栗本 浅野)

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